日本臨床歯科医学会東北支部特別講演
(東北SJCD特別講演会報告)
日本臨床歯科医学会東北支部は、平成30年9月30日(日)宮城県歯科医師会館にて特別講演会を開催した。
【教育講演1】小濱歯科医院 日本臨床歯科医学会理事 小濱 忠一 先生 座長 菊地 賢
「長期経過症例の検証に基づいたインプラント治療成功の鍵」
Ⅰ、インプラント周囲炎への対応
Ⅱ、抜歯即時埋入とCAD/CAM応用の優位性
10年前はインプラントについてポジティブな話ばかりだったが、トラブルとしてインプラント周囲炎が危惧されている。リスクファクターとして患者レベルで11~56%、インプラントレベルで11~45%の報告がある。
原因として表面性状とセメントリテイニングと言われているが、2016年ドイツハンブルグの司法判決ではノーベル(タイユナイト)、ストローマン、アストラ3社の有意差がないとされており、早期喪失、インプラント周囲炎は表面性状でなく他の原因を考えなければならない。
粘膜貫通部の炎症を防ぐには…
1、異物(プラーク・セメント)
2、インプラント周囲組織の状態
3、アバットメントのコネクション・マテリアル・形態
4、上部構造のデザイン・咬合があるが、埋入深度が浅いとアバットメント形態が悪くなる。
外科処置は3~4壁性なら良いが、1~2壁性なら結果は良くないなどインプラント周囲炎に対する考え方と対応として、確実な治療概念と戦略が確立されていない現在では、罹患させない対応が最優先。
結論として1、埋入深度と位置 2、周囲組織の環境 3、アバットメントの選択と形態である。
抜歯即時埋入は90%行っており、よく質問されるが根尖病巣は見える範囲で掻爬している。
一回法抜歯即時埋入は歯肉形態と高さの温存が可能であるため、造成処理は最小限。一方待時埋入では必ず大なり小なりの硬・軟組織の造成処置が必要となるため治療難易度は高くなる場合が多い。
【教育講演2】原宿デンタルオフィス 日本臨床歯科医学会理事長 山崎 長郎 先生 座長 永澤 義安
「修復治療の新たな展開」
Ⅰ、State of Art Esthetics 卓越した審美性の創出
Ⅱ、Restorative Update 最新のマテリアルとその問題点
仙台での73回目のハッピバースディありがとう。今の目標は80歳でのフルマウスレストレーションだ。
1994年まではメタルセラミックスを使っていたが、最近10年間はプロセラの導入もありメタルは使っていない。当初ラミネートベニアにはひどい目にあったが、接着の進歩から問題なく使っている。
セレックは当院でフレームワークし外注で盛ってもらっている。メクトロン社のピエゾは垂直方向だけでなく楕円を描く動きをするので、マイクロスコープを併用する切削面は非常にスムーズで今は全ての形成に使用している。
プレス系のマテリアルではGC initial LiSi Pressを使用している。曲げ強さは450MPaを越え、低溶解性で酸にも強い。セメントはパナビアをつかっている。
現在のデジタルのスキャナーで歯肉縁下の印象を取ることは難しいが、このぐらいの形がいいのではないかというコンピューターマニピュレーションをもとに設計できる。
インプラントはオールオン4の症例はなく、オールオン8から骨質が悪いと10になる。堀内先生とのコラボはすべて即時プロビジョナルを入れている。81歳でインプラントを入れ10年後91歳の症例だが、高齢者だからといって特別な治療をするのではなく、食べる喜びしかないようなら通常の治療をするべきだ。
デジタルなど新しい刺激は必要だが、すぐ飛びつく事無く周りから情報入れ自分の診療に取り入れることが重要だ。歯医者は大して金にならないし命を救うこともないが、患者さんにきれいなものを入れて生き様を変える事ができる仕事なので頑張ってくれ。
日本臨床歯科医学会のビッグなお二人の講演会とあって、最新かつ歯科界の近未来を予見できるような非常にレベルの高い講演会となった。
詳細については多数の著書、雑誌等を一読していただければ、なお理解が深まるでしょう!
佐藤 充記