日本臨床歯科医学会東北支部学術大会報告
去る、平成30年12月16日(日)、2018年度 第3回 日本臨床歯科医学会東北支部学術大会が宮城県歯科医師会館にて開催されました。
一般講演として仙台で開業されている、仙台ファースト歯科 村上 翔先生に「複数歯の欠損を伴う咬合再構成ケースにおける包括的アプローチ」という演題で会員発表が行われました。
前歯部補綴物の脱離により、受診した患者さんにおいて、包括的な治療計画のもと、インプラント、歯冠補綴、部分矯正を用いて機能と審美の改善を行うフルマウスのケースを発表してもらいました。現在、プロビジュナルレストレーションの状態で途中ではあるが、岡口先生からのアドバイスを参考にケースを仕上げてもらい、もう一度発表していただく予定です。
教育講演として、東京都千代田区にて開業されている、岡口歯科クリニック 岡口守雄先生をお迎えし、「マイクロスコープを用いた精密歯科治療」という演題で午前と午後合わせて4時間の講演をしていただきました。
岡口先生は17年前よりマイクロスコープを臨床で使用し始めたが、拡大視野の歯科治療は、先生にとって臨床の最大の技術革新であるとおっしゃっていました。
講演の概略を以下に記します。
マイクロスコープが普及した現在、単に見るためのツールではなく、いかに使いこなしその拡大視野の世界を精密な臨床に反映させるかがテーマとなっている。
審美治療、MIを極めようとするとき、肉眼を超えた処置が必ず必要になる。修復物を適合させるオーダーをいかに下げることができるか、健全なエナメル質をいかに切除せず残していくか、歯質と修復物の移行部の滑らかさなどマイクロスコープの拡大視野なしには達成できない。
さらに、肉眼では見ることができなかった歯内療法の世界においても、マイクロスコープ下では、複雑な解剖学的形態に潜む様々な感染源を実際に見て治療することができるようになった。又、CBCT、OKマイクロエキスカ(岡口先生考案)といったツールを使用することにより従来、難治療症例といわれ抜歯を余儀なくされていたケースにおいても、治療できる可能性が大きく広がった。
一方で、歯内療法におけるもう一つの重要なカテゴリーである、Vital pulp therapy(歯髄保存)もMTAとマイクロスコープにより大きく進化してきており、拡大視野の中で行う精密で限局的な感染象牙質の除去により、保存が不可能であると思われていた歯髄もMTAを使うことで保存の可能性が出てきた。
以上の様な内容で様々な症例を動画を交えて、精密な歯科治療にマイクロスコープをどう生かすかということを丁寧に解説していただきました。規格性のある資料に裏づけされた長期経過症例に会員一同感動を覚えました。マイクロスコープの重要性を再確認した一日になりました。