去る、令和1年6月16日、宮城県歯科医師会館にて、第1回 日本臨床歯科学会東北支部学術大会が開催されました。
教育講演として、港区赤坂で開業されている寺西邦彦先生をお招きして、「欠損補綴におけるインプラントと、パーシャル・デンチャーの共存とは―フレキシブルに考えよう―」という演題で懇切丁寧に解説していただきました。
寺西先生は冒頭、我が国にOsseointegrated inplantが臨床導入されてから、約30年以上が経過し、臨床における有用性については疑う余地はないが、最近の多くの歯科雑誌では、「欠損補綴と言えばインプラント」といった風潮があり、パーシャル・デンチャーは過去の産物といった傾向があると警鐘をならしていました。
しかし、先生は今年で歯科臨床40年目を迎えるが、最も長い長期観察症例は35年で、キャスト・パーシャルデンチャーの症例であり、予後は良好であり、インプラントの長期経過例よりも5年近く長いと話されました。日進月歩の歯科界において長期経過だけが全てではないとしながらも補綴物といった人工臓器が生体にいかに調和するかを判断する上で長期経過例からの情報は極めて有用であると話されました。
今回は、「欠損補綴の勘所」-フレキシブルに考えよう-といったテーマで
1、予後良好なキャスト・パーシャルデンチャーの臨床的基準
2、インプラントをも含めた欠損補綴オプション選択のガイドライン
3、キャスト・パーシャルデンチャーとインプラントの併用法
4、総義歯補綴学からみたインプラント補綴
について多数のケーススライドを提示し、講演してくださりました。
パーシャル・デンチャー成功の基準は、次の4項目であり、
・ 力のコントロール(前後的、左右的な力のバランス)
・ 咀嚼時、空口時を問わず動きの少ない安定した義歯
・ 適切な前処置としての、残存歯の処置
・ 人工歯の摩耗への対処
それらを達成するには、以下の事が重要になります。
- 適応症例の選択
- 適格な基本設計
- 適格なマウス・プレパレーション
- 構造設計を考えた適合良好なキャスト・フレーム
高齢化社会となり、それぞれの患者さんに出来る限り最善の治療を施せる様に、様々な治療オプションを勉強し、身に付ける事が必要であると話されました。患者さんが不自由なく食事する事が出来て、それが出来るだけ長期間にわたって良好に経過してこそ、その治療が成功したと言えるのだと思います。
40年間、歯科の変遷をみながら、最前線で仕事をされてきた寺西先生の人間味あふれる講演は大変心に残りました。若い先生方だけでなく参加された先生方皆が臨床を見つめ直すよい機会になったと思います。