日本臨床歯科医学会東北支部は、令和1年9月29日(日) 宮城県歯科医師会館にて大阪支部会長・米澤歯科醫院 米澤大地先生をお招きし、学術大会を開催した。
教育講演 午前の部 米澤歯科醫院 米澤 大地先生 座長 横山 大助
「包括歯科診療に必要な歯科矯正の知識―審美、咬合、歯周、インプラントとのコラボレーション」
・審美治療に役立つ矯正学的知識
審美では顔貌の分析だが、矯正では頭骸および顔面の分析をし、顔面の審美性における軟組織の重要性としては側貌の口唇位が平均より男性1~2mm、女性2~4mm後退した位置が良いとされる。ANB2~3度、下顎前歯の唇側傾斜度6mm程度である。また、咬合高径を増加させるとクラスⅡ傾向に、低下させるとクラスⅢ傾向になる。
・矯正治療と補綴治療の咬合のゴール
LF.Andrewsの6Key of Normal Occlusion(1970年頃ストレートワイヤー)VS ナソロジカルな補綴治療のゴールだが、共通のゴールを持つ必要がある。矯正はⅠ級(例上下第一小臼歯4本抜歯)Ⅱ級(上2本抜歯)Ⅲ級(下2本抜歯)仕上げの咬合、補綴治療のゴールはABCコンタクトなど
(1)咬頭嵌合位が顆頭安定位にあること
(2)咬頭嵌合位への閉口時に早期接触がなく、安定した咬合接触があること
(3)偏心滑走運動時に咬頭干渉がなく、適正なガイドがあることとされるが、適正な顎位は臼歯のオクル―ザルストップ、アンテリアガイダンスが必要となる。
一般講演 草野歯科 郡司 良律先生 座長 横山 大助
「歯列不正を伴った咬合再構成症例に対するSequential Treatment Planningの実践」
59才女性 左上の歯痛を主訴に、歯周治療後臼歯部のブリッジ、21番クラウン、11,22番ベニアの修復を図っている症例。
米澤先生のコメント
・左右6番が欠損している。歯周疾患と思われるが、まず喪失の原因を考えなければならない。
・下顎角の割には咬耗が激しい。咬合力の破壊度はプロビを入れて経過をみる。
教育講演 午後の部 米澤 大地先生 座長 横山 大助
・圧下、叢生改善と部分矯正
IPR(ストリッピング)パターンか抜歯パターンだが、下前歯IPRは+2,5mmくらいはできる。後戻りの対策として犬歯間幅径を広げないことで、外に出るが上との咬合を考え、上の辺縁隆線が当たれば削り、顎間ゴムは必須である。成人の矯正をすると必ず鼓形空隙があくのでストリッピングが重要。病的歯牙移動(PTM)の改善は下顎の臼歯欠損により起こるパターン、歯牙の前方傾斜によって起こるパターンがあり、下顎の咬合平面を補綴でまっすぐにする。
・インプラント埋入と矯正治療のタイミング
基本は矯正治療のあとだが、独自の改良を加えたSteiner Box Scoreを使用し、水平的動きは計算し矯正治療終了まえにインプラントを埋入している。
これまでの例会では、アンテリアガイダンスを得るために専門の矯正医紹介後、補綴を行った症例を多数共覧した。しかし今回はアンテリアガイダンスを得る矯正治療のステップを分りやすく説明して頂いた。矯正を依頼しても思うような咬合に仕上がっていない経験のある会員も多いと思うが、今回特に午後の部の講演で疑問が解決したのではないでしょうか。
米澤先生が「ファイナル時、アンテリアカップリングの一枚の写真を撮るために診療している。」の一言が非常に印象に残る講演になった。