東北SJCDは、平成28年3月13日(日)日高先生による4回コースの最終4回目をシロナデンタルシステムズ仙台支店にて開催した。今回はインプラントがテーマで講演と模型実習(Straumann BLT Implant)が行われた。
日高先生の講演概要
Practical Management for an Aesthetic Peri-implant Gingival Tissueが今のインプラント治療において重要である。インプラント修復物への不満の多くがProblems of Facial Gingival Estheticである。今日の講演のメインは不足したインプラント周囲組織をどのようにして回復するかである。(技工的でなく)
Construct Facial Gingival Estheticには以下の6つが重要である。
*Implant position
*Prosthetic emergence
*Position in the jaw
*Gap
*Hard tissue
*Soft tissue
Implant positionを考える場合、インプラントの辺縁歯肉の高さは天然歯の1.5倍~2.0倍の厚さがないと維持できなことを知っておく必要がある。天然歯と同程度の辺縁歯肉の高さを保つには、唇側の歯肉の厚さが天然歯の1.5~2.0倍の位置に埋入する必要がある。(抜歯窩の口蓋側よりに埋入)
インプラントが口腔内と交通することにより、インプラント周囲骨は吸収する。骨が薄ければ周囲軟組織は根尖側により多く移動する。(厚ければ辺縁骨が残るのでそこで維持される)上部構造によりさらに圧迫され根尖側に移動する。つまり周囲軟組織は2段階で根尖に移動する。そのため、理想的な位置より少し歯冠側に軟組織があるような状態にしなければならない。(約1mm)
埋入深度については、辺縁歯肉から4mm 補綴物のマージンから(セメントエナメルジャンクション)2mmの位置である。
角度は2度から4度ぐらいの幅しかない。日本人の場合、上顎前歯部の骨幅が狭いので直径4mmのインプラントを入れようとすればジャストに入れる感じで埋入するしかない。
Prosthetic emergence
Supragingival contourは天然歯の形成で話したようにGull wing が基本である。Subgingical contourはConcave形態である。なぜなら、辺縁歯肉に厚みを持たせる必要があるからである。(わずか歯肉縁下1mm程度ではあるが)その下のアバットメントはストレートである。(CAD/CAMの問題で、Concaveは困難) 隣接面に関しては。インプラント間の歯間乳頭の高さの再生が骨頂から3.5mmであることを考慮してHalf ponticテクニック等を用いる。ただし、バイオタイプは人によって違うので一つの基準として用い、プロビでコンタクトポイントを確認する。
Position in the jaw
Esthetic risk assessment in implantにおいて、上顎前歯部のインプラント治療のリスクが一番高い。次に下顎前歯部、上顎臼歯部、下顎臼歯部の順である。
Gapに関しては、Single tooth gap Two teeth gap Multiple gap Fully edentulous gapの順に難しい。埋入の基準を守ることが大切。
Hard tissueに関しては、Seibertの分類で0~3へと順に困難になる。(0は日高先生の追加分類で、骨の幅も高さも残っている場合)
Soft tissueもHard tissueの分類と同じである。ただし、臨床的には必ずしも同じではない。たとえば、インプラント埋入に必要な骨の幅はあるが軟組織の幅が不足している場合などがある。(インプラントの径はもともとあった天然歯の径と同じにする必要はない。ただし、軟組織的には周囲天然歯列との調和からみて不足している場合がある。その結果、清掃性に問題が生じることがある。)
Immediate VS staged implant placement
抜歯窩の唇側骨の厚みによってクラス1からクラス4に分類して治療法を決定していく。即時埋入が適応の場合、ギャップには人工骨か自家骨を填入、さらには結合織移植の併用などを用いる。また、即時埋入と同時にGBRを行う場合,Ridge preservationを行ってステージアプローチで行う場合などがある。骨も軟組織も不足している場合は、抜歯窩の治癒を待ってから骨と軟組織の造成を行う。
Flap design depending on a purpose
基本は歯周外科のテクニックである。
- 歯肉弁根尖側移動術
- 歯肉弁歯冠側移動術
- 歯肉弁側方移動術
- 口腔前庭拡張術
- 遊離歯肉移植術
- 小帯切除術
目的に合わせて使い分ける。軟組織の診断を行なってフラップデザインを決定する。軟組織の高さ、厚さ、乳頭、付着歯肉、インプラント周囲のBiologic widthの診断が重要。手術の際の重要項目は、血液供給路の確保、死腔を無くす、固定する、以上の3項目である。
今回のインプラント編も大変わかりやすい内容であった。複雑に思える臨床理論も、日高先生の解説にて理解が明確になったと思えたのは私だけではないと思う。今回の日高先生のコースに参加した先生は、自分なりに得るものがあったと感じたに違いない。
それほど有意義な4回コースであった。