東北SJCDは、平成28年2月21日(日)日高豊彦先生による4回コースの第3回目を宮城県歯科医師会館にて開催した。
今回はクラウン&ブリッジをテーマに講演と支台歯形成のデモが行われた。受講生には事前に模型による支台歯形成の宿題が課せられ、当日各人が日高先生のチェックを受けてアドバイスを頂いた。
日高先生の講演の概要
Solutions for Dental Estheticで
*Harmony of a face, lip and tooth
*Dentogingival complex
*Axial crown contour
*Pontic to edentulous ridge relationshipの4つの項目がクラウン&ブリッジに重要である。
Harmony of a face, lip and toothの項目においては、上顎前歯部を中心に全顎的に修復した13年経過症例にて診断用ワックスアップ、プロビジョナル、最終補綴の各ステップのポイントを指摘し、いかに顔貌、口唇、歯の調和を獲得していくかの解説があった。
Dentogingival complexの項目では、Biologic width(日高先生の考える数値)の把握、Biotype(歯周組織のタイプ)による歯肉退縮傾向の理解。結合織移植にてタイプを変えることで改善できること。実際に結合織移植にて審美を獲得した症例を多数提示して詳細に解説した。
Axial crown contourの項目では、初めにContour GuidelineとGull Wingについて解説があり、周囲歯肉の歯頚部からの立ち上がりが歯頚部からの歯の立ち上がりと相似形をなしているとするGull Wingのほうが日高先生には真実的に見えるとの意見であった。それにより日高先生の選択はGull Wingである。
周囲組織からGull Wingを考えてcrown contourを決定する。そうすることによりOver、LessもNormalに変更できる。
もし、Lessのままであれば歯肉の発赤や易出血が消失しない状況が続くことにもなる。歯肉縁上の場合はこの考えでよいが、縁下の場合は形成マージンの深さによって変化する。セメントエナメルジャンクションまでの深い場合はS字状カーブになるが、浅い場合はS字状の必要がない。つまり修復物のマージン設定位置の違いで作る修復物のcontourは違う。歯頚部歯肉の盛り上がった修復物の場合は、縁下のcontourをややoverにし、歯頚部歯肉が下がった修復物の場合は、歯肉縁下のcontourをS字状にして歯肉が盛り上がるように設定することで改善できる。ただし、歯肉と骨の厚さと高さの診断をして、適応症を選択すること。軟組織だけであればクラウンの豊隆を変えるだけでよいが、骨と歯肉の削除が必要な場合は、オペが必要。
Proximal crown contoursについては初めにTarnowの論文から骨頂からコンタクトポイントの距離と歯間の鼓形空隙の関係について解説があった。これがベースになっていろんな論文が出でいる。高さだけではなく幅の問題であり幅は1~2mmの距離に設定すれば歯間空隙は埋まる。幅についてはハーフポンテックを与えることで改善できる。
Pontic to edentulous ridge relationshipの項目ではPonticのいろんな形態について解説があった。抜歯窩は基本的に吸収していくので日高先生にとってはOvate ponticの選択しかない。将来的問題を考えた場合、クリーニングができる形態が大前提である。抜歯後のovate pontic については抜歯前の歯肉、骨の状況によるFresh Delayed Stagedに分類して対応する。
Post&Coreについて
メタルポストとファイバーポストでは破折した場合、破折線の方向が違う。メタルの場合歯根に対し縦に、ファイバーポストの場合横に破折が起きる。ファイバーポストの場合、やり直しができる可能性がある。レジンだけのコアでもよいが、それだけであるとレジンがかける。ファイバーポストを使用した場合、支台歯の補強にファイバーポストが役立つのでファイバーポストは支台歯の部分に必要である。フェルールは1.5mm以上が必要。Biologic widthを考慮すると骨頂から最低4.0mmの健全歯質が必要になる。
Material selectionについて
日高先生はComposite resin とCeramicの治療が主体である。光の透過性はガラス系が高く酸化系は低い。ただし臨床的には強度との関係で厚さが重要になる。そうなると実際の透過性は違ってくる。0.5mmのジルコニアが0.3mmのジルコニアになればガラス系の材料と透過性は変わらない。また、たとえ透過性の低い酸化系の材料でもメタルに比べ、歯頚部の透過性はよく明るくなる。より天然歯に近づけるには、ポーセレンだけのべニア(エナメルが残っている場合)か薄いジルコニアルフレームにポーセレンを盛り上げるのが現時点ではベスト。ただし、支台歯の変色がある場合はマスキングが必要になるのでジルコニアの厚みは少し厚くする。形成量についてはオールセラミックにおいてもメタルセラミック同様に、歯頚部で1.0mm軸面で1.5mm咬合面で2.0mmである。
築盛ポーセレンのチッピングに関してはポーセレンの厚みはメタルセラミックと同様2.0mm以内にすることが重要である。そのためには技工士さんにアナトミックスキャンをオーダーすることが必要。コンピューターに任せると均一な厚みのフレームになりチッピングがしやすくなる。e-maxの破折強度はインセラムと変わらないのに臨床的に破折が少ないのは、シラン材が一番効果的につくので接着が強固にできる点である。ただし、ガラス系のセラミックは荒い歯磨剤を使うと表面が荒れて透明感がなくなるのでクリーニング時には注意が必要。
Preparationに際しては以下4つの項目を考慮して行うことが大切。
*Uniform thickness
*Smooth contour
*Supportive design
*Biology
Cementationについて
シリカを主成分とする歯科用セラミックの場合:微小機械的嵌合と化学的結合(シラン処理剤)レジンセメント
シリカを主成分としない歯科用セラミックの場合:アルミナブラスト処理,レジンセメントが主流であったが、酸性機能性モノマー含有プライマーが有効(1995)特にリン酸エステル系モノマーが有効(2004)。よって酸化セラミックの場合はアルミナブラスト、酸性機能性モノマー(AZプライマー)、レジンセメントである。酸性機能性モノマーを使用すればレジンセメントはどんなものでも接着強度は変わらない。しかも、サンドブラスト処理の有無に関係ない。
またジルコニアのMonolithicの場合は、硬さが1000~1300MPsで除去にかなりの時間を要すること、また逆に欠けないがゆえに害になることを考慮して接着をさせないほうが安全である。
以上日高先生の講演内容の要約である。文献的根拠に基づく理論、その臨床での実践方法を懇切丁寧に解説して頂いた。
大変有意義な一日であった。