東北SJCDは、平成29年3月26日(日)第46回例会を講師に鳥取県米子市開業 今井 俊広・真弓先生をお迎えし、宮城県歯科医師会館にて開催した。
午前
今井 俊広先生
審美治療も機能・構造・生物学の上にあり、炎症のコントロールと咬合のコントロールがないと長期安定が保てない。当院では炎症はPI20%以下にコントロールできないとインプラント等の治療は入れないが、今日は咬合のコントロールについてお話しする。
顎口腔系が長期安定を保つための咬合の指標は、顎関節の安定した下顎位で最大嵌合し、適正な筋長での咬合高径であり適正なアンテリアガイダンスが重要。
適正なら一点に戻るが、ぶれると歯牙、顎関節内のぶれを増徴させ、咀嚼筋にも負荷をおよぼす。パラファンクションの原因は1、情動ストレスもあるが、2、咬合の異常は咬合力74㎏/㎤と正常12㎏/㎤よりずっと大きく、くさび状欠損、歯牙の破折などを引き起こす。
午前
今井 真弓先生
分析・診断するため適切な資料を得るための適切な診査項目がある。
ClassⅠ保存修復とClassⅡクラウン・ブリッジ(1/3顎以内目安)は現状の咬合位で治療
ClassⅢオクルーザルリコンストラクション 咬合・下顎位の再構成が必要
ClassⅣ歯周補綴
フローチャート・診査の流れで1本のクラウンで中心位での模型診査、CTを行っているわけではないが、1~2本のインプラントでも当院はClassⅢ、Ⅳを想定する。インプラント希望の左下大臼歯欠損の患者さんでも顎関節の症状があり、顆頭の後方移動が認められる症例はプロビジョナルで再構成。スペースが少なくても上顎を少しずつ削り生活歯での修復した症例は現状の咬合位。
午後
今井 俊広先生
微少性外傷とは下顎が偏位した状態で機能することによって生じる持続的、反復的負荷で、CR(生理的下顎安定位)での咬合器の診断になる。95%はなんらかの不正咬合を有しているが、問題が生じた場合治療が必要になる。
同じ上顎前歯のフレアーアウトでも臼歯部咬合崩壊の例と臼歯部がしっかりしているが以前前歯部に早期接触がある例は原因が違い、後者は矯正、補綴だけでは症状が再発するので、プロビジョナルにて咬合拳上してから矯正、補綴で治療する。
午後
今井 真弓先生
閉鎖性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は筋肉が虚脱するレム睡眠時気道を圧迫するために無呼吸・低呼吸になるが、OSAS男性385人の追跡調査でAHI(1時間の10秒以上無呼吸・低呼吸の回数)20以上の重症は8年で生存率63%!20以下は96%だが、15年以上では1割の患者さんは心疾患関連死している。
治療は、
1、CPAP(持続陽圧呼吸器)AHI20以上 医科での治療
2、OA(口腔内装置)歯科での治療(医科からの紹介状必要)
3、手術だが、
CPAPは50%の患者さんが挫折しているという論文から口腔内装置の治療を始めた。
ICPと最大前方位(13mm前)の約60%前方(8mm前)でOAつくり、有効性はスノアクロックというスマホのアプリ使用でいびきの%の減少、血圧の下降が認められ、「体が楽になった」という例がある。
CRバイトの採得とスプリント製作の実習
アクアライザーを入れ、一週間後にRaymond Kim法(バイラテラルマニピュレーション・Dawson法の変法)にて中心位・生理的下顎位を採得し、上顎模型を1㎜の硬質シートでバキュームフォームする。
① 咬調⇒54|45レジン添加⇒口腔内に戻してそっと咬んでもらう
② 口腔内から外し54|45部咬合面に水平にバーで瘢痕部だけ残して削合
③ 763|367部にレジン添加⇒口腔内に戻しグライディングしてもらう
④ 76|67瘢痕部残して水平に削除⇒口腔内に戻しグループファンクションになっているか確認する
⑤ 3|3にレジン添加⇒緩やかな犬歯誘導にする(臼歯部のディスクルージはわずか)盛り過ぎないように!
⑥ 21|12にレジン添加⇒口腔内に戻し前方運動、側方運動させる
今井先生ご夫妻には何度も仙台に足を運んで頂き、米子市で開業なされていることもあってか保険中心の診療にもご理解が深く、その中にあって咬合でトップを走り続けることには本当に頭が下がる思い。
今回もスプリントの手順を事細かに解説して下さり、また睡眠時無呼吸症候群の新ネタを教示して頂くなど本当に有意義な例会となった。ちなみに筆者もOAを入れ、スノアクロックでいびきの%が大分改善されたのが確認できました。不摂生な生活の中、ちょっとは長生きできるかな?