東北SJCDは、平成28年11月27日(日)平成28年度第3回例会を歯科医師会館にて開催した。
症例発表1 永澤 義安先生
「上顎中切歯歯根破折症例 審美領域における補綴治療に対するデンタルテクニシャンとの共通認識」
主訴は上顎前歯部が動いて気になる、右上1番にインプラント埋入した症例。
瘻孔があるために抜歯即時を避け、抜歯後テルプラグで一次的リッジプリザベーション、3カ月後バイオス+自家骨とシトプラストでGBRしストローマンボーンレベルインプラントを埋入。近くの技工所にアバットメントとプロビジョナルの製作を依頼したが共通認識が得られなかったため、間接法(カスタムインプレションコーピング使用)で再印象、技工所を変更し補綴処置を行った症例。
十大技研 島崎先生のコメント
・間接法はレジンの刺激の為害性や診療時間がかかることより、ほとんど直接法(既成インプレッションコーピング)の印象になっている。
・テクニシャンも術者と同じ認識が必要だが、現況ではなかなかできないのが実情。
症例発表2 菊地 賢先生
「インプラントを用いて咬合再構成を行った一症例」
左右臼歯部欠損にてバーティカルストップがない症例に右上642左上12456上顎8本、右下65左下6下顎に3本インプラント埋入した症例。
パーシャルデンチャータイプのオクルーザルスプリントを装着、咬合位を是正し、欠損部には抜歯即時埋入を基本に一回法、二回法、GBRとテクニックを駆使し山﨑の分類タイプⅢクラスⅡデビジョンⅡを一年の短期間で修復。
咬合高径の挙上は前歯部2mm、臼歯部1mmぐらいで左臼歯部は咬合面メタルになっている。CTによるステントを術者が製作し、インプラント埋入の際
補綴的ステントの埋入位置だけではなく、術中の状況により変えているとの事。
症例発表3 杉山 豊先生
「ガミースマイルに対して矯正的、歯周外科的対応した一症例」
ガミースマイル、下顎右側偏位、右上2番歯根破折の疑いの診断。下顎スプリントを入れ下顎位のズレを自覚させ、MEAWテクニック矯正治療にて上右臼歯部を挺出、上顎前歯部圧下し咬合平面をフラット化、上顎前歯部に歯冠延長術を行い、その際右上2番の歯根破折を確認、同部に抜歯即時でインプラントを埋入。歯間乳頭を温存するため1抜歯即時2一回法3細い径のヒーリングアッバトをオーダーし使用した症例。
3壁性であってもHDD(水平的深さ)>HDW(水平的幅)なら抜歯即時埋入可との論文を示され、ヒーリングアバット径の削合はミリングマシーンで行えたとの事。
講演 島崎 春樹先生
「カスタムアバットメントの製作について」
アバットメントの歯肉貫通部としてエマージェンスプロファイル径は、アストラのデザインによるとノーティッシュディスプレースメントからサポートソフトティッシュ、カウンターティッシュ、フルアナトミカルがあり、エマージェンスプロファイルもコンケイブ、ストレート、コンベックス形態がある。設計は術者からガム模型とワックスアップで指示をもらいたいが、実際は各歯科医院のオーダーを予想して製作している。
「ニケイ酸リチウム・ガラスセラミックス」
イボクラ社はEmpress、Empress2からe.maxになったが、松風のヴィンテージLDプレスのほうがよく使われている。ポーセレン(ヴィンテージMP 松風)88メガパスカルより377メガパスカルと強度がある。ブロックをメタルの鋳造と同様にスプルー線を立ててプレスするが、キャストのタイミングにより100メガパスカル以下にも。また表面の荒れがあり、内面を削りながら合わせるために手間はかかる。
前歯のきれいさを求めてe.maxのフレームをオーダーするケースもあるが、実際はフレーム材にジルコニア、e.maxジルコニアという陶材をレイヤリングしている。
最後に山形大学歯科口腔外科のCT画像を3Dプリンターで読み込み、立体的な頭蓋骨を製作する装置を紹介し、今後のテクニシャンの可能性を示した。
また、守 篤彦先生が先の高知合同例会の「顎関節症状を伴う下顎左側偏位症例に対して補綴的に治療を行った一例」を発表し、進化したプレゼンに一同「ありがとう。ご苦労さま」。
今回は東北SJCD内部での発表となったが、発表中に忌憚のない意見、質問が多数だされ、普段はなかなか聞けない技工サイドの話も盛りこめられ、大変勉強になる例会となった。