日本臨床歯科学会東北支部は2021年2月7日(日)、初めてのWeb(Zoom)での学術大会を開催した。
教育講演
「構造的予知性を高める審美修復治療からデジタルデンティストリーの今」
東京支部副会長 ノブレストラティブデンタルオフィス
北原 信也先生
今日は自宅からの配信になるが、久しぶりにネクタイを締めビッシッとお話したい。
私のオフィスは二階にレストラティブ、エンド、オルソの3診療科があり、日本初だが認可に半年かかった。他にシンガポールでのライセンスがあるが、現地の若手歯科医は非常に優秀でレベルが上がっている。(日本がアジアナンバーワン???)
審美修復治療における構造とは接着、支台築造、フェルール、支台歯形成が大きな要素だが、私のライフステージでもある接着についてお話する。
転倒による前歯部破折の症例(修復部分が全く分からない息をのむような、完全犯罪とのこと)で、上顎左右1番のベニヤの接着はレジンセメントを使うが、レジンは固めるだけで両方にボンディングが必要。象牙質側の表面は泥上のもの(コラーゲン)でEDTA処理後、GM(プライマー)を象牙細管に入れる。セラミック側はMDPが有効である。
支台築造が良くない(coronal leakage)とエンドが良くないよりも10年後根治の成功率が悪くなる(44.1%と67.6%)。また、側枝は歯頚部1/3に15%、中間1/3に11%(合計26%も)根尖側に74%で、ある大学院生の研究から維持効果はポストの長さは関係がないことより、かつて習ったようなポストを長く掘れば掘るほど良くない。
またポスト印象の2回法はテーパー形成で歯質が薄くなり、やっているのは日本ぐらいだ。
ポストコアの新しいコンセプトは、『no need long post keep dentin ferrule adhesion』である。
ガラス系セラミックス(e-max)の7年後は表面が溶けてきて光沢がなくなる。
10年はもたないように思われる。
デジタルデンティストリーとして、口腔内スキャナーでの印象採得によりラボサイドで急速にデジタル化がすすんでいるが、直線のスキャンが苦手なため、曲線の形成が良い。
ジルコニアの表面は高倍率でも面のあれが見えない。また、対合歯を削るのは摩擦でありジルコニアは少ないが、半年に一度時間をかけて咬合調整とハイポリッシュする。ジルコニアの接着はつきにくいが、内面を一層削りシリケイテッド(ガラス系セラミックス化 シランカップリング材でボンディング) した症例をアメリカの審美学会で発表し、評判を得た。
質疑応答
Q, ボンディングのワンステップ、ツーステップの使い分けは
A, 主にツーステップだが、すぐの場合などワンステップも。
ペントロンジャパンの「北原セット」を使っているので連絡して頂ければ。Q, ガラス系セラミックスの劣化について
A, 酸性系の環境(酢を飲むとか)は劣化しやすい。ハイポリッシュしてもぼそぼその面が出てしまう。Q, 形成面がエナメル質と象牙質が混在する場合
A, 象牙質(EDTA)のボンディングを使った方が良い。
一般講演
「歯周組織再生誘導材を用いた歯周組織再生療法の一症例」
シュンデンタルクリニック 鎌田 俊先生
29歳女性に基本治療後、上顎左右2番にCT画像、麻酔下のプロービングで骨形態をイメージしながら顕微鏡下SRP、右下5番はフラップをあけリグロスを使用し再生療法を行なった。
リグロスは腫瘍細胞を増殖させる因子であるが、血中濃度を上げるものではないとの報告。
北原先生のコメント
『咬合の診査とコントロールが重要。細菌検査を取り入れても良い。』
初のZoomでの開催、無事に終了し一安心。北原先生のエビデンスのある症例は「SJCD魂」を思い起こさせてくれる素晴らしい講演だった。
コロナ渦中、鎌田先生会員発表ご苦労様でした。杉山副会長の閉会に「後輩にたくさんの刺激を受けた。」と皆さん同感だったのではないでしょうか。