東北SJCDは、平成28年10月9日(日)前回好評であった4回コースに引き続き日高先生をお招きして、宮城県歯科医師会館にて今年度第1回の例会を開催した。
初めに鈴木 祐先生による症例相談の形で症例報告があった。
タイトルは、
「ヘビーブラキサー患者に対する治療計画」
主訴:下顎右側臼歯部ブリッジの咬耗によるメタルの露出がきになる。(日中または夜間の歯ぎしりの自覚がある。)
前歯が小さいのが気になる。
日高先生のコメント
咬合高径は適切でも審美的に補綴物を作製できないのであれば、咬合高径を挙上するということは臨床的にあり得る。ただし、咬合高径を挙げると咬合力があがるというデータがあるので気を付ける必要がある。ブラキサーでもともと咬合力が強いので注意が必要。
この症例の場合テスティングを行うことが大事である。犬歯にカスプライズして、8番の削合を行って干渉を取り除き、それでうまくいきそうであれば8番の抜歯を行う。前方ガイドを与え、臼歯の干渉をなくすことがまずやるべきこと。その後欠損の補綴治療に進む。欠損部の補綴がインプラントかブリッジかの選択は難しい。前歯に関しては上顎べニアでいけるかもしれないが、下顎はフルクラウンタイプでしょう。材料は二ケイ酸リチウムでよい。
日高先生の講演概要
- SJCDの学会への移行について第23回日本歯科医学会総会(福岡国際会議場)にて「Past&Future」のタイトルでランチョンセミナーを行った。その時の講演についての話があった。学会移行への布石的講演とのことであった。SJCD(Society of Japan Clinical Dentistry)設立:1978年会員数:1800名支部:日本12支部日本臨床歯科医学会(Society of Japan Clinical Dentistry)専門医連携治療:Interdisciplinary approachの必要性
- 症例報告4~5件の有名な歯科医院を受診し治療計画を提示されたが、すべて違うのでセカンドオピニオン的に受診した症例。1年以上治療を開始しないで多数の歯科医院を受診している。症例概要35歳、男性主訴は歯をきれいにしたい。機能も含めて。約15年前にフルマウスの治療を受けている。
顔貌的には問題はない。口腔内では右下臼歯部欠損のnarrow ridge 多数歯カリエスなどの問題が多く詳細な診査診断を行っていく。
希望は義歯が嫌なのでインプラントにしてほしい。審美的にきれいにしてほしい。
診断用ワックスアップを行い、下顎両側臼歯欠損はインプラント、左上臼歯欠損もインプラント、右上2番欠損はブリッジ補綴。その他はクラウンタイプで補綴という治療計画を提示。マテリアルはオールセラミックス、ジルコニアでセラミック。
セカンドオピニオンをする歯科医師は治療をしないのが原則。そうでないと患者の奪い合いになってしまう。
セカンドオピニオンをするということは自分ではその症例を治療しないという宣言である。
この症例の場合インターディシプリナリーアプローチになるが、患者が自分でOral surgeon Technician General Dentistを指名してきた。そのためやらざるを得なくなった。
サイナスリフトは外科医、インプラント埋入からは日高先生がやることになった。最終ゴールのイメージを共有して治療に入る。右上2番は抜歯後、結合組織移植を行って審美的にブリッジで補綴。左上はサイナスリフト後インプラント埋入。右下は骨移植を拒否したため、ショートインプラント埋入。全顎プロビジョナル装着。最終補綴にはステインなどは一切使わず白くするように希望。形態についてもプロビの修正部位を自分がパワーポイントで作って具体的に指示。セカンドプロビから、納得がいくまで7か月を要した。
初診から最終補綴まで5年。2年後右上6番の頬側遠心咬頭部にセラミックの破折認めた。限界運動では、まったく接触していない。再現できない咬合接触を行っていることになる。無理に戻さずその形態にしておく。5年経過後は特に変化なく良好。 - Implant site development1:Narrow bone2:Maxilla-Maxillary sinus1:Narrow bone2:Maxilla-Maxillary sinus
3:Mandible-inferior alveolar nerve
それぞれの解決方向は決まっている。これらの臨床的実感について症例を提示して解説した。
非常に多くの臨床に則したエビデンスを示しながらの講演は、日高先生ならではの講演であった。今後も機会があればまた是非講演をお願いしたい。
追記:講演前日に東北SJCDにて、日高先生の還暦を祝う会をメトロポリタン仙台にて行った。3Dプリンターで作製した日高人形を記念にプレゼントした。気に入っていただけたでしょうか。